これを観ようと思ったのは、ゲーム「デトロイト ビカムヒューマン」というのを遊んでいたことがきっかけでした。たまたま検索か何かで見たのか。ゲームの方はクリアして、すごい面白かったです。コナーは変異体になってもよかったけれど、ハンクたち警官サイドについてまま、マーカスたちと人間たちの調停者みたいな立場になってくれたらなぁとも思いましたが(もしかしたらそのルート、出せていないのかな)。カーラ、アリス、ルーサーは三人で幸せに暮らしてほしいです。アンドロイドたちの物語ですが、悪役のような描かれ方をされたトッドたちも、いつか報われてほしいですね。
で、観た後の感想。正直、観なければよかったと思うくらいにキツかったです。そのくらい、見るのに気持ちが必要でした。これが「映画」であることを忘れるくらいに、リアリティがあり、そこにある痛みが滲んできている感じがしました。映し出されているデトロイトの街並みは、戦場のように、建物は破壊され、火が投げられている。序盤の方は手で撮影されたような場面があり、誰かの記録を見ているかのよう。
1967年、今から50年以上前に実際に起きた事件をもとに制作されたとのこと。暴動が起きている街中のモーテルで、発砲があったとして警官たちが詰め掛け、宿泊者たちを拷問にかける。事の真相は、発砲というのはおもちゃの銃(競走とかに使う合図用のピストル)で、狙撃手なんていなかった。けれど、宿泊者たちは武器を持っていないのに、「抵抗した」、「銃を奪おうとした」、「ナイフを奪おうとした」といった、ありもしない理由を作られる。それも、警官に殺されてしまってから。銃で撃ち殺された彼らはそれを弁明する余地すらないことに、虚しさと悲しさがあります。
モーテルに押しかけた警官たちによる暴力と恫喝は話が進むにつれてエスカレートしていきます。その顔は悪魔か、あるいは、臆病者か。誰も止めることのできない緊迫した空間で、自分もそこに閉じ込められたみたいに緊張が伝わって来ます。特に一番怖かったシーンは、女性が叫んでいるシーンでした。緊張が頂点に達し、引き裂かれるような悲鳴をあげているにもかかわらず、彼女たちを開放することもなく、侮辱し、手をあげる場面と、恐怖のあまりに祈り続ける宿泊者たちを嘲笑う場面。人種差別だけではない、今もまだ根深く存在し続けている「差別」が、あの場所にもある。
また、差別を受けて来た人々は、街を破壊し、略奪に走るシーンが冒頭からあります。たしかに略奪や本来とは別の対象へ暴力を振るうことはあってはならない行為であるけれど、そこにある背景、経緯を無視することは決してできないと、改めて思わされました。自分たちは理不尽に差別されていて、権利を奪われ、そこにもう言葉による抗議も対話も意味をなさず、ただ振りかざされる力に頭を垂れているしかないという状況にあったとき。そうして打ちのめされ続けたとき、吹き出した感情はそういったものに向けられるのかもしれない。(自分はどこからそれを見ているのか、ということにも注意する必要もあり……)。
そして、自分も何かお話を書いている中で、差別や偏見が登場する物語を書くこともありますが、現実世界の苛烈さにはほど遠いのだと、突きつけられる感覚にも愕然としました。(そして、本物の現実は、映画よりももっともっと、残酷)。
いろいろと考えさせられる作品で、観た後は最初にも書いた通り、このタイミングで観るべきじゃなかった、と思いました。けれど、観てよかった作品でもありました。それぞれの登場人物の描写がだんだんとよくわかってくるので、思うことがどんどん積み重なってきました。整理しきれなくなりそうなので、このくらいで。