マグニフィセント・セブン

2020/08/23

Movie

最近近所のツタヤにふらっと行って、面白そうなものとか、気に入ったものとかを借りて観たりすることがあって、映画館にはまだ行くことができていないんだけれども、部屋で楽しんでいます。

さて、マグニフィセント・セブン。

「七人の侍」のアメリカ版「荒野の七人」のさらにリメイク版。一人一人がめちゃくちゃ格好いいんですよね。キャラクターも立っていて、こんないい感じのキャラ作ってみたいな〜〜〜ってめちゃくちゃ思いました。吹き替えもとても豪華。あんまりにハマりすぎて、友人にも勧めて鑑賞してもらった。感謝しかない。以下ネタバレ含む感想。


舞台は南北戦争後のアメリカ、小さな街ローズ・クリークという街。金を採掘している実業家が土地を街の人々から奪うも同然のことを仕掛けて、抵抗した人は見せしめにされてしまっていました。教会で街のみんなが集まって話をしていたんですけれど、そこにカレン夫妻も参加しているのですが、てっきりパッケージもちゃんと見ていなくて、この旦那さんが立ち上がる話なんかなって思ったら、あっさり旦那さんも撃たれてしまい、まじか……となった出だし。しかも逃げようとした別のご婦人を後ろから襲うという、ボーグ(実業家)の卑劣さ。教会まで燃やされてしまう……。


法務執行官のサム・チザムは黒ずくめの衣装で、街に行けば人がじっと注目するようなただならぬ雰囲気を放っていて、街のお尋ね者を探しにやってきていた。酒場に入るシーンからの重々しい雰囲気はとても格好いい。

その酒場にはジョシュ・ファラデーという男も別のテーブルでギャンブルに興じていたけれど、チザムがお尋ね者を撃ったときにも平然と席に座って軽口叩いているのは印象的。しかも、チザムに銃を向けようとした相手に対して、ファラデーが銃を向けて「やめておけ」と言わんばかりに警告し、自分もすぐさま銃をしまうのが、それだけチザムが強く、また、ファラデーもその強さを理解していると……。
チザムに声をかけられたファラデーも仲間に加わり、それからどんどん仲間を集めていくんですが、このへんちょっとだけRPGっぽくて面白いなーって思って見ていました。

南北戦争で狙撃の名手と恐れられた「死の天使」グッドナイト・ロビショーとミステリアスなナイフ使いのビリー・ロックスのコンビ。

テキサスレンジャー殺害の罪で追われていたバスケス(彼はメキシコ人なんだけれど、このテキサスレンジャーなるものは何?と思って調べたんですけれど、どうもしばしばこの組織はメキシコ人やインディアンに対して、思わしくない行為を行っていたとも言われているので、バスケス自身も何かあったのでは……と思うものの特に語られないので、そこは観ている側の妄想。お尋ね者であることには変わりはなく……)。
山師でグッドナイトいわく「伝説」のジャック・ホーンは後ろから突き落としてやったと自慢げに話している男たちをとっ捕まえて銃を取り返すという荒々しい登場の仕方。大きな熊と言われていましたが、確かに……追いかけてくる時の迫力がすごくて思わず笑いそうになりました。後から気付いたんですけれど、フルメタル・ジャケットにも出演されているヴィンセント・ドノフリオさんが演じていました。

そして、コマンチ族のレッドハーベスト。自分の部族の言葉で話しているので、英語を話すのは一回だけ。吹替版でも吹替の声優さんがコマンチ族の言葉そのままで吹替をされていたので、役者さんも声優さんもすごいなーと思いました。
そんな一人一人の出自もばらばらな七人がそろってローズ・クリークに行き、街を支配している警備会社と戦うシーンはとても格好いいですね。一人一人の戦い方も違うし……あとチザムの馬が、「さがっていろ」と言われてすっと避けるのがすごいクールでした。
ボーグたちが街にやってくるまでの間、街の人々と七人はボーグを迎え撃つための準備をしているのですが、序盤で燃え落ちてしまった教会が再建されたシーンが自分ではとても好きです。子供たちがお水どうぞ、と言って渡してくれたり、死を覚悟して戦わなければならないことがわかっていても、街を立て直すために一生懸命協力し合っている街の人々や七人の様子は少し微笑ましくて、切ないです。
そして決戦前日の夜、戦うことができないとグッドナイトは街を出て行ってしまいました……。これで戦力が一つ欠けてしまったわけですが、それでも他の誰ひとりとして彼を責めることもなく、また自分もと出ていくこともなく。ジャックが言っていたと思うんですけれど、最後にどんなに小さくとも正義のために、それも尊敬すべき者と戦えることができて誇らしいということを言っていたんですけれど、他の面々も、おそらくはそういうことなんだろうな、と……。
おびただしい人数を従えてやってくるボーグたちに対して、七人と街の人々が迎え撃つ戦いの最中、最初はかなり優勢でした。思わずがんばれ、と応援したくなるんですが、ボーグたちはガドリングまで持ち出す始末。しかも敵味方関係なく当たるという非常さ。それを知らせるとともに颯爽と舞い戻ってくるグッドナイト。ガドリングに向かって走り出すファラデー、そして次々と倒れていく仲間……。
最後に、ボーグと対峙するチザムの登場はめちゃくちゃ格好いい。そしてボーグは自分で燃やした教会の中で、エマに撃たれ、復讐は終わり、生き残った者たちはすぐに街を去っていき、命を落とした者は手厚く埋葬され……。エンドロールは「荒野の七人」のテーマが流れていました。(一応借りたDVDのメニュー画面でも流れる)。
「時代遅れ」になるであろうガンマンたちが、最後に小さな正義のために命をかけて戦う、誇りみたいなものを感じて、もちろん七人とも生き残ってほしかったけれども、それでも彼らは戦ったんだ、というかっこよさがありました。(荒野の七人や七人の侍も見なくては……)。
あと、西部劇ってちゃんと観たことがないジャンルだったのですが、アクションも迫力あるし、面白かったです。


これを観ていたとき、タイミングよくなのか、フォークナーの短編集も読んでいたんですけれども、時代的に重なるところもあってより楽しめました。特に「赤い葉」はレッドハーベスト、「バーベナの匂い」はエマとはまた違う「復讐」の話だなと思わせるものがありました。

これは完全に憶測なので間違っているかもしれないんですけれども、レッドハーベストはボーグの部下になっていたデナリというインディアンと戦うんですけれど、「インディアンの恥だ」と言うシーンがあります。フォークナーの「赤い葉」でもだんだんとこう、インディアンの生活も凋落していく感じが描かれていて、誇りを捨てて白人の下で弱い者を痛めつけるデナリ(もしかしたら本人はそこに誇りを捨てたという自覚すらなく)と、誇りのためにおよそ不可能と思われる戦いに加わったレッドハーベストという対照的な二人だなぁと(レッドハーベストは別にチザムと縁もなければ、たまたま出会ったという経緯だし。彼の持っている精神的な強さに惹かれたところがあるんじゃないかなぁと)。
音楽は時折和風っぽく聞こえるところがあって、決戦前に一人一人が映るシーンにぼーん、ぼーんとお寺の鐘の音みたいなのがしたり(再建した教会にも鐘があったけれど、それはカーン、カーンって感じで鳴らされていた)、チザムさんがボーグと対峙したときに流れるのはまさに一騎討ちといった静かな音楽だったり、よく聞いてみると面白いですね。


どのキャラクターも好きなんですけれど、グッドナイト・ロビショーの持っている強さと弱さの不安定なところは魅力的でした。あと純粋に名前がかっこいい。荒野の七人は登場人物だけ少し調べてみたんですけれど、このキャラクターなんか格好いいなって思ったらグッディと似たようなポジションの人でした。


で、さらに余談で、この世界観にはまりすぎて、ゲーム「レッド・デッド・リデンプション2」を買いました。これで自分もチザムさんみたいに格好良く戦うぜ~と意気込んだはいいものの、まだまだ全然操作が下手。あと法務執行官にはなれない。自分はギャング。でもこれはこれで、文明化された社会に置いて行かれそうになっていく者たちの物語って感じで面白いです。何よりやること多い。

主人公アーサーも好きなんですけれど、彼の面倒を長く見ていたというホゼアという人物や、頼もしい「チャールズ」というキャラクターも魅力的です。なにより、マグニフィセント・セブンでもこんな景色見た!と思えるのが楽しい。街並みもそうだし、あとは自然が綺麗。キャンプも楽しいです。鉄道を敷いている人々にも出会ったんですけれど、その中に広東語で挨拶とかしてくれる人がいて、もしかしてビリーもこんな感じだったのかなぁと思ったり(いわゆる「クーリー」という人たち?)。
世界史は専攻していなかったのもあってそんなに詳しくないので、このあたりの歴史とかにも興味が湧いて来ます。フォークナーの他の作品も読みたいなぁ。